海外大学院留学生活|リーディングとエッセイと成績と

今回の記事では、イギリス大学院留学生活が実際どんな感じなのか、ざっくりとした大学院のスケジュールに触れながらミクロな視点でまとめています。

イギリス大学院の年間スケジュール

はじめによく言われていることですが、前提としてイギリス大学院は1年のコースが多く、早く修士が取得できるのはメリットではあるのですが、その分他国では大体どこも2年かけてやるものを1年に凝縮してるので、年間通してそれなりに忙しいです。

私はサセックス大学のMA Journalism and Media Studiesコースに在籍していて、これは文系のコースなので比較的余裕がある部類に入るのですが、留学生という立場故なのか、それでも負担を感じます。別記事でも少し触れていますが、すでに海外経験があり慣れている人はもっと余裕があるのかもしれません。

理系コースに在籍していた知り合いは朝から夕方までレクチャーか実験が入っていると嘆いていたので、コースによってこの辺はだいぶ変わりそうです。日本でも一般的に理系は忙しいのでその感覚で大体あってると思います。

9月中旬から12月上旬が秋学期(Autumn term)、1月中旬から4月上旬のイースターまでぐらいが春学期(spring term)の授業期間となります。6月上旬〜8月末までの夏学期(Summer term)は最後の修士論文にあてる期間となります。詳しくは各大学によってだいぶ異なるので大学ウェブサイトの年間日程、Term date等でご確認ください。

授業がある期間は実質半年程度とかなり短くて、エッセイに費やす時間が多いです。秋学期はあまりエッセイを書くための期間がしっかり設けられていないので、授業期間中からどういうテーマで書くか等、方向性を早め早めに担当教官と相談した方がいいです。

教えてもらうことが中心だった学士レベル(Undergraduate)とは異なり、修士レベル(Postgraduate)は自発的に研究していくことが求められているので、そう考えれば当然といえば当然なのかもしれないです。さほどTerm dateに差はないので、このような自発的姿勢はundergraduateの学生たちにもある程度求められている感じはありましたが…

ちなみに私は2種類ある修士のうちのTaught mastersだったので講義がそれなりにありましたが、より博士課程(Phd)に近いResearch mastersもあります。そちらはコースにもよるでしょうが、講義がほぼないそうなので日々の生活がまた変わると思います。

参考:Taught mastersの種類
Master of Arts (MA)
Master of Science (MSc)
Master of Business Administration (MBA)
Master of Engineering (MEng)

Research mastersの種類
Master of Science (MSc)
Master of Philosophy (MPhil)
Master of Research (MRes)

引用元:https://www.studyin-uk.com/study-options/postgraduate-and-masters-degree/

日々の大学院生活|講義とリーディングに追われる毎日

ここからは完全に個別事例になるのですが、私の場合は各期ごとにモジュール(科目)が3つずつ入っており、各期2つの極めてアカデミックなモジュールに対してレクチャーとディスカッションがセットで実施+専攻がジャーナリズムだったことがあり実際に取材を行ったりIn Designを使用してニュース、特集記事を制作する実践的なクラスが各期ごとに1つずつあり、合計週5コマ入っていました。1コマ90分です。実践的なクラスは2-4時間でニュース記事の書き方のいろはを教えてもらうレクチャーに終始することもあれば、フィールドワークに行ったり多彩で一番面白いクラスでしたね。

1クラスで半日が潰れるとはいえ、週に5コマ?!ヨユーじゃん!!と思われたそこのアナタ。日本の文系学部の週に5コマとはワケが違います。授業以外の時間はディスカッションクラスのために毎週4~5本程度の文献を読み込んだうえで自分の意見をある程度練っておかなければなりません。レクチャーはあるものの、あくまで参考文献を読み込むためのイントロ的な立ち位置で、この参考文献、リーディング(Reading)を読むことが大学院生活の大半を占めるといっても過言ではないです。

1本1本1~2ページなら余裕なのですが、1本10~20ページ程度あり、しかも専門用語がバリバリ出てくるわ理論が複雑だったりで1本読むだけでも留学生にとっては相当骨が折れます。超当たり前ですが全部英語です。ネイティブはスキミングと言ってIntroductionと要旨がまとめているSummaryをざっと読むだけで要旨がつかめるようなのですが、英語を第一言語としない私たち留学生はざっとではなくある程度精読しないと意味がわかりません。

生まれた時から英語で教育を受けてきたカナダ人のルームメイトも全部読むのは無理と言ってたぐらいなので、全ての文献を毎週毎週読破することは無理ですし教授もそこまでは求めていないのですが、最初のイントロとサマリーにあたる部分だけには目を通し、何が議論されているのかは把握するべきです。

また、以前書いた記事でも言及したように私はプレセッショナルコースに行かなかったので、特に前半の秋学期はエッセイライティングのいろはを叩き込む必要がありました。学内の語学学校が提供する留学生向けのIn Sessionalクラスを受けることがもはや必須だったため、なんだかんだで週に7~8クラスに出席したでしょうか。フルタイムで働く社会人と違ってある程度自分でコントロールできる要素は多いですが授業の実施日程は決まっているし、時間があるようで意外とありません。

リーディングと成績評価

ただこのリーディングについては1つ言っておかないといけないことがあって、あくまで通っていたコースの話にはなりますが、出席を取るモジュールは一切なく、成績評価はエッセイで100%行われることがほとんどでした。ディスカッションのためにいくら入念に準備して臨み授業への参加貢献度が高くても、エッセイが書けていなければパスできません。つまり、リーディングは成績評価に入りません。(成績評価の仕組みの詳細については下記セクションをご覧ください。)

そういう意味で、リーディング一切読んでないのがあからさまな、親に言われたから仕方なく留学にきましたと言いたげなモチベーションの低い中国人がそこらへんにごろごろ転がっていたし、地元のイギリス人学生なんかでもそもそもあまり出席してこない人もいたぐらいです笑

オイオイコイツマジで大丈夫か?よく生きてるな?と思うような斜め上にすごい人間を目の当たりにできるのもある種留学の醍醐味であるのですがそれはそれとして、日本人は真面目だし意思があってきている人がほとんどなのでこんなこと言うまでもないのですが、例え出席が取られなくても出席するべきだし、ディスカッションにも可能な限り参加すべきだと私は思います。

一見やる気のないイギリス人学生たちは自分たちの土俵で戦っているのだから上手い手の抜き方を知っているのは当然で、一旦クラスに出てくればディスカッションでの彼ら彼女らの貢献度は非常に高かったし、知っているイギリス人クラスメートのうちの1人は最高評価であるDistinctionを取得して卒業していきました。

そんな中、留学先では人生1年目のある意味赤子のような自分たちが彼らと同じように手を抜いたらどうなるでしょうか?そもそも、いくら成績に入らないとはいえ、ディスカッションの席で何かを聞かれて何も答えられなかったらめちゃくちゃつらいですよ。同じコースの中国人クラスメートが教授に意見を求められた際にどうしても何も言えない、という場面に遭遇したことがあるのですが、授業後に彼女、泣いてました。彼女はあまり勉学に熱心なタイプではなくリーディングもあまりしていない、ということを常々聞いていたので寧ろリーディングほとんどしていないのに授業に来れるその勇敢さに感心していたぐらいなので、何とも言えない非常に複雑な気持ちでしたが…。

私もこんなこと言ってますが、英語で自分の意見を表明することがめちゃくちゃに苦手だったし、教授の言ってることはそれなりに理解できるものの、誤解してとんちんかんなことを答えて恥をかいたこともありました。各々の訛りでしゃべるクラスメートの英語やネイティブの容赦ない英語は話題によっては全く訳がわからず、日々のディスカッションは恐怖でしかありませんでした。

留学初期は苦労したがそのうちに慣れて聞けるようになる、という感想を書いてる人もいますがそんなにすぐ聞けるようにはなりません。笑 確かに慣れはするので聞かなくてもいい部分がわかるというか、重要なところは落とさないようになるというか、多少意図が汲めるようにはなります。

ただ、そのうちに聞けるようになる、というのが本当であれば、アカデミックな場に限って言えば1つにはその人が毎週このリーディングをしっかり行っていた、ということがあるのでしょう。英語の聞き取りがそこまで得意でなくてもやはり知っていることは耳に入ってきやすいです。英語の能力自体は変わらなくても教授が何を言っているのか、ディスカッションで何が議論されているのかきちんと理解できる素地ができます。

さて、これでリーディングの重要性がわかっていただけたでしょうか。笑 リスニングやスピーキングにハンデがある留学生は、リーディングを真剣に取り組むことでこのハンデを巻き返すしかありません。自分が要領のいいタイプだとか、英語がネイティブと遜色なく使えるというよほどの自信がない限りは真面目にこなしていかないとしんどいです。

エッセイと成績評価

はい、大学院生活の肝になるエッセイの話です。秋学期と春学期の締めくくりとして楽しいエッセイ提出時期がやってきます。夏学期は修士論文の提出ですね。各モジュールの分量目安は3000-5000words、修士論文目安は12,000-15,000wordsです。もちろん全て英語ですし、参考文献を読み込んだ上で理論立てて書かなければならないので結構な負担があります。

しかしこのエッセイの取り組み方は本当に人によって様々で、授業期間が降り返すぐらいから指導教官のところへ自発的に行きエッセイのテーマや方向性を相談しに行きそこからコツコツ書き始めるタイプがいる一方で、英語圏出身学生ならいざ知らず留学生までも(!)、ターム(学期)の終わりが近づくと設けられる教授とのTutorial(面談)を受けてテーマと方向性、参考文献を確認したはいいもののそこから全く筆を進めず、締切1週間ぐらい前になって慌てて寝る間も惜しんでやるタイプもいます。

なんにしてもこのエッセイの出来は成績及び卒業可否に直接かかわってくるので非常に重要です。再三述べておりますが、読めない聞けない話せないの三重苦を負っている我々留学生はなるべく早い段階から準備をするのが賢明です。

秋学期は結構ギリギリになってしまったのですが、春学期は折り返し始めた頃からエッセイのトピック、アウトラインの下書きをなんとなく作り参考文献に目星をつけます。それから担当教官とのTutorialでトピックと参考文献案を共有し、このトピックならこの文献は読んだ方がいい、ケーススタディはこういうことが議論できるものの方がよいなどアドバイスを受けるのでそれを考慮しながら授業期間のリーディングの合間を見つけてアウトラインを固めたり文献を集めつつ、授業が終わったらエッセイをひたすら書いていきます。

エッセイの提出時には成績評価の際の公平性維持のために自分の名前を入れないルールがあり、一応形式的にはエッセイ以外の要素は加味されないことになっています。しかし主に採点するのは指導教官で、すでにテーマや方向性については話し合っていますから名前が書かれていなくてもおそらくはどこの誰が書いたのか大体把握しているはずです。

また、周りを見ていると授業への参加貢献度とエッセイでの成績はそれなりに相関性がありました。しかし、これは指導教官がエッセイ以外のことを考慮して成績をつけているから、というよりはやはり普段の態度や取組がエッセイの内容と質にわかりやすく反映される、という話だと思います。だからこそ、出席や発言回数、内容が評価に入らないからといって手を抜くのは愚策です。

成績評価の仕組み

最後になってしまいましたが、イギリス大学院(英語圏の大学院はほぼ似たようなシステムかなと思っていますが)の成績評価システムはやはり日本とは少し違います。成績の大学によっても多少の違いはあるでしょうが、最終成績から各モジュールまでそれぞれ0から100のスコアで計算されたDistinction(70ー100)Merit(60ー70)Pass(50ー60)Fail(0ー50)の4段階で評価されます。50点以下を取ってしまうと落第です。ちなみにサセックス大学のUndergraduate(学部生)は40点取れればパスでした。

各科目の落第者にはResit、追試という救済措置が一応ありますが、聞くところによるとエッセイの再提出を次の学期に求められる、つまり提出しなければならないエッセイ(もしくはテストでしょうか)の数が1つ増えるという苦しい状況になるため、それはもうどんな手段を使っても避けたいところです。それでなくても1つ1つの課題、重いですからね、、、

数字を見ていただければわかるのですが、100点満点ではあるもののクラスで1、2番を争う優秀なエッセイを書いてようやく70点(Distinction)が見えてくる感じなので各課題の平均点にもよりますが、60点以上取れればそれなりに喜んでいいと思います。修士論文(私は卒業制作を選びましたが)の担当教官からは8、90点以上は教授歴が長い人でも見たことがほとんどないと聞きました。

私の最終的な成績はメリットでしたが、ディスティンクションを貰ったモジュールもいくつかあり、アカデミック畑でのキャリアを志していたわけではないし、海外人生1年目のばぶちゃんにしてはよく頑張ったと個人的には満足しています。

ディスティンクションで卒業できる人はほとんどいないとよく言われますが、知り合いの少ない私の周りでも2人ほど取っていたのでほとんどいない、という感じではなさそうです。ただ、ディスティンクションで卒業するためには全モジュールで平均70点以上にならなければならないのでそれを考えるとやはり難しいです。

もしディスティンクションで卒業できたら履歴書に学位名+ with distinctionと記載でき、就活の際のアピールになります。日本でも英語圏文化をほぼそのまま輸入していて、上司が英語圏出身の外資企業を受ける人は高評価を得られるかもしれませんね。

まとめ

以上、ひたすらリーディング!リーディング!!リーディング!!!ディスカッション!エッセイ!エッセイ!!エッセイ!!!なイギリス大学院生活についてお届けしました。実際はSocial(日本の大学で言うサークル)や、スポーツアクティビティに自分の匙加減で参加することもできるので、要領のいい人は遊びや課外活動の割合を増やして楽しい学生生活を送ることも可能でしょう。もし機会があればこの辺についても記事にします。

ただ、勉強だけしていればよい環境もなかなかないですから、貴重な機会、ぜひ最大限活用してください。

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